■樫原 正澄       関西大学経済学部教授


■経歴
 
 1951年、大阪府生まれ。大阪府立大学農学部卒。同大学大学院中途退学。大阪府立大学農学部助手を経て、現在、関西大学経済学部教授。専攻は、農業経済学、農業政策学。

 著書に、『都市の成長と農産物流通』(ミネルヴァ書房,1993年)、『都市のくらしと農業問題』(共著,ミネルヴァ書房,1995年)、「都市と農村のあり方−消費者と生産者の連携−」(『関西再生への選択−サステイナブル社会と自治の展望−』第4章4,自治体研究社,2003年)などがある。


■発表の内容   永続可能な社会の農業・食糧問題

 私たちが生きて行くために必要不可欠な食糧を供給する産業が農業であり、その存立がなければ、人間の生存はありえない。

 1980年代中頃以降の急速な円高の進行によって、生鮮農産物を含めて食糧(食料)の海外依存体制はますます強まり、現在では食料自給率は約40%である。日本農業の構造的衰退・崩壊がもたらされており、国民食糧の安定的確保のための基盤が喪失しつつある。それと同時に、食の安全性が大きく問われている。また、食生活においては食の外部化は進展し、調理・加工食品の消費は拡大している。国民消費者に安全・安心な食糧を供給するための農業生産のあり方を考えなければならない。

 世界の人口増大、地球環境問題の顕在化による農業生産の世界的な停滞傾向によって、世界の飢餓と貧困の解決はますます困難となっており、世界の食糧問題の深刻化が予想されている。輸入依存による食糧確保のあり方は、根本的変更を迫られているといえよう。

 こうした問題について、近年の農業・農政を巡る情勢の変化を踏まえて、農業・食糧問題を包括的に論じることにしたい。