■植松 千代美  大阪市立大学大学院理学研究科講師 農学博士


■経歴
 
中学生の時に「メンデルの遺伝の法則」に感動を覚え、遺伝学を志し、東北大学農学部で植物育種学を専攻。しかし植物バイオの萌芽期にあたり学位取得まで一貫して組織培養をテーマとする。民間研究機関でのポスドク時代には植物の遺伝子組換えも行う。

1991年より大阪市立大学理学部附属植物園に勤務。植物進化と、その原動力となる植物が内包する遺伝的変異創出のメカニズムに興味を持ち研究テーマとする。1996年の遺伝子組換え農産物「安全」宣言に疑問を持ち、以来本業のかたわら、遺伝子組換え技術と組換え植物の問題点を紹介する活動を続ける。

所属学会:日本育種学会、日本植物生理学会など。

著書:「食環境問題Q&A」(共著、ミネルヴァ書房、2003年)。


■発表の内容   生態系と農業の永続可能なあり方を探る
 
  人類が安定した食料供給のために「農耕」を開始した時点から、自然を破壊してきたという考え方がある。しかしヨーロッパにコムギ、アメリカ大陸にトウモロコシ、アジアにイネと、それぞれの地域の気候風土に適した主要穀物が発達してきた(角田重三郎「新みずほの国構想」)ように、農業は自然条件に依拠して発展してきた。にもかかわらず過度に化学物質に依存した近代農業は生態系のバランスを崩し、私たちの生活を脅かすに及んでいる。

農業は生態系における生物の多様性に貢献できるのか、農業そのものにおける多様性の喪失はくい止められるのかなど、生態系と農業の永続可能な関係について考えてみたい。