ここ数年来、地方自治体では家庭(生活系)ごみの有料化が市民の間で問題になっています。最近になって大阪府下でも活発化してきました。
中でも、住民説明の中で使われている「有料化したらゴミが減る」ということに不信を抱く人が増えています。某市の有料化議論に参加し、「ほんまですか?」と住民の皆さんから質問を受けました。
そこで、先ずは大阪府のごみ実態を大阪府のホームページから覗いてみることにしました。IT化がすすんだ昨今、ごみ資料だけではなく政府・地方自治体の資料類が簡単に入手できるようになりました。SSnetのみなさんもぜひお試しください。
さて、大阪府の一般廃棄物実績を過去5年(2000年〜2004年)に遡って「生活ゴミ」「事業系ゴミ」別に並べてみました。
今回問題になる生活ゴミについて、1人あたり排出量が少ない自治体は「河内長野市」の平均567グラムと「枚方市」の573グラムです。さすが産廃埋立場問題で住民が立ち上がった地域、自治体職員がリサイクル・リユースなど訴えている地域の特徴がでています。逆に多いのは岬町の1097グラム・泉大津市の1080グラムで、計算方法が違うのかもしれませんがこの数値には疑問を抱きます。
最近有料化に踏み切った「泉佐野市」の場合、2000年の900グラムから818グラム・844グラム・831グラム・800グラムと有料化しなくても年々減ってきています。件の某市担当者が「泉佐野市は有料化して減りました・・」というのは、この資料の限りでは正確ではありません。
ゴミのマナーの悪さでいつも批判されている「大阪市」はどうでしょう?
大阪市の2000年の生活ゴミ一人あたり排出量806グラムで以後、758グラム・679グラム・678グラム・667グラムと年々減っています。問題は、事業系という名の産業ゴミです。2000年1086グラム・1074グラム・1061グラム・1059グラム・1042グラムと横ばいです。大阪市は事業系ゴミが全体の6割を占めており、しかも許可業者が回収している場合が多く、既に有料化しています。大阪市で言う限り「有料化でゴミが減る」なんて言えません。
有料化の背景に厚生労働省の有料化方針があります。しかし、その口実に使われている「減量」「資源循環」「地球環境保全」何れをとっても、物質循環の最後にあたるゴミ処理分野だけで解決しようとすることには無理があります。製品の設計・製造段階、つまり「上流」からゴミになるものをつくらない「非ごみ対策」こそ、国・自治体が早急にやらなければならないことです。
ここに「永続可能な社会をつくる市民・研究者ネットワーク(略称;SSネット)」を立ち上げます。発足当初の中心的な構成団体は、「大阪市民ネットワーク」(藤永延代代表)、「神戸SS研究会」(加悦秀樹代表)、「大阪から公害をなくす会」(芹沢芳郎代表)の3団体ですが、志を同じくする市民団体や研究者団体、さらに団体に所属しない「関心を持つ市民個人」がつぎつぎと合流してくださることを期待しています。
ちなみに上の3団体は、2004年10月、大阪此花会館で行われた大集会「永続可能な社会をつくる市民研究交流集会〜みんなで生きるために〜」を中心になって支えた団体で、このSSネットは、いわばその集会の後継組織です。当面このネットには、2004年集会の陰の力となった日本科学者会議・公害環境問題研究委員会内外の研究者が、全面的に協力することになります。
サステイナブル(永続可能な、持続可能な)という言葉は、2002年の環境サミット、いわゆる「ヨハネスブルグ会議」以来、誰でもが口にするようになりました。それはもとはといえば1970年代の初めから、「このままでは人類の文明はいつまでもつづかない」という危機意識をもとにして発展してきた概念です。ところがこれが一般語になると、いろいろな曲解が行われるようになりましたし、また具体的な「永続可能な文明」「永続可能な社会」への道は、これからの私たち自身が、主体的に見いだしていくしかない課題です。ここに立ち上げるSSネットは、およそ「人類とわれわれ自身の未来」に関心をもつすべての人々の協力によって、これらの課題を解決するための舞台となることをめざしています。